keep on
「今日から漆黒の副団長になるヤツだ」
そう言われ出てきたのは、漆黒にはまずいない線の細い青年だった。
「はじめまして、フェイト・ラインゴッドです。えーと…これからよろしくお願いします」
この日から漆黒の副団長はフェイトになった。
――団長が連れてきたのなら、きっと副団長になるような器なんだろう。
そう納得する団員もいれば
――あんな弱そうなヤツが副団長!?
と、納得出来ない団員もいる。
フェイトの副団長としての初仕事は後者の相手だった。
「副団長!」
「……あ、ハイ。僕に何か用?」
(まだ慣れないんだよなぁ、副団長って呼ばれ方。早く慣れないとな)
そんなことを思っていたフェイトは自分を呼んだ団員に近付いていく。
「手合わせ願いたいのですが…」
「え!!僕と!?…別にいいけど…あ、ちょっと待ってて」
フェイトはそう言うと、何かをみつけたらしく走っていく。
「アルベルー!僕ちょっと彼に手合わせしてって頼まれたから行って来るね」
「あぁ!?そんなめんどくせえことしなくたっていいだろ?」
「でも、一応僕今日から副団長だから、団員の人のこととか知っておきたいし…」
「はぁ…どうせお前は言い出したら反対しても聞かねえからな。勝手にしろ」
アルベルは呆れながらフェイトに言う。
フェイトが頑固なのを長い間一緒にいるアルベルは知っていたから。
「うん。じゃ、行って来るね」
「くれぐれもあの力は使うなよ」
「わかってる!」
待たされていた団員の方に何故かフェイトとアルベル2人で戻ってきた。
「何でアルベルまで来るんだよ?」
「暇だからな」
「…本当なのか?」
「あぁ」
どうやらアルベルはフェイトと団員の手合わせが気になっているらしい。
屋上にはたくさんの団員が集まっていた。
2人の手合わせを見に来たのはアルベルだけではなかったようだ。
新しい副団長の実力を見るいい機会だ。
やはりみんな気になっていたらしい。
「えーと、僕は自分の武器使っていいのかな?」
「かまいません。俺も自分の武器を使いますから」
「わかった。…じゃ、始めようか」
勝負はすぐに決まった。
「…っ」
「ふぅ…これでいいかな?」
フェイトの剣が団員の首ギリギリのところにあった。あと一押しすればこの団員の命は無いだろう。
「はい…さすがですね。団長が連れてくるわけです。参りました」
始まってすぐにフェイトは突っ込んで行った。
一見無謀にも見えるが、フェイトくらいのレベルの者には全然問題無い。そしてそれが勝負を決めた。
「まだまだ甘えな」
「うるさいな…いいんだよあれくらいで」
「…フン、帰るぞ」
「どこに?」
「俺の部屋」
「……そっか。」
そう言うとフェイトは急に団員たちがいる方へ向き直る。
「僕たち部屋に戻るんで、何かあったら呼びに来てください」
周りの団員たちに聞こえるように大きな声で言うと、フェイトはアルベルと一緒に階段を下りて行った。
「なぁ、アルベル。僕を漆黒の副団長にしたのってさ…」
「一緒にいたいから。見えるところに置いておきたいから、と言っただろ」
「それ本当?…実はこれをやらせたかったからじゃないのか?」
「違う。嫌ならそんなもん放っておけばいいじゃねえか」
「…ダメだよ。だってこれ重要な仕事なんだろ?放っておくなんて出来ないよ」
フェイトはアルベルの部屋であることをしていた。
一方、アルベルはベッドの上に寝転がっていた。
「この書類にちゃんと目を通したのか?これ一体いつのだよ…」
「俺はそういうことは好かねえんだよ。」
「好く好かないの問題じゃないだろ?もう…。やっぱり僕はこれのためにここに来たのかも…」
フェイトはアルベルの机の上の書類の整理をしていた。今までアルベルが書類整理など一切しなかった為、すごい量の書類が放置されていた。
根が真面目なフェイトはこういうものを放っておくことが出来ず、文句を言いつつも片付けていた。
片付けがとりあえず一通り終わったのは日が暮れてからだった。
「はぁ…初日から結構忙しいなぁ。…あれ、アルベル寝ちゃったの?」
いつの間にかアルベルはベッドで寝ていた。
「寝てるみたい。疲れてた…のかな?」
「…」
反応が無い。
「アルベルの寝顔なんてなかなか見れないから、よく見とこう」
少しの間じーっとアルベルを眺めていたフェイト。
そして、なんとなく伸ばした手はアルベルの顔に届く前につかまれる。
「うわ!?アルベル起きてたの?」
「…今、起きたんだよ」
「起きてるなら起きてるって言ってよ。びっくりするだろ!」
「今起きたって言ったじゃねえか、クソ虫が」
「もう……痛いから手を放してくれよ」
きつくつかまれているため自力では放せない。
「嫌だ、と言ったら?」
「はぁ?何言ってるん…うわ!?」
急に腕を強く引っ張られる。
気付くとフェイトはアルベルに組み敷かれていた。
「ちょ、ちょっと…何するんだよ!?僕は放せって言っただろ?」
「うるせえな。少し黙ってろ…」
そう言うとアルベルはキスしてきた。
「んぅ…ちょっ…ん。…ふ…は……ん」
抵抗しようとするが腕は相変わらず強くつかまれていて動かすことが出来ない。
アルベルのキスでだんだん何も考えられなくなってくる。
けれど、ドアをノックする音で急に現実に戻される。
「……何の用だ?」
「少し団長と副団長に頼みがあるのですが…」
ドアの向こうから団員の声がする。
「…だとよ」
「アルベルと僕に頼み?何だろ…」
「少しだけよろしいでしょうか?」
「あ、はい!ちょっと待ってて。…アルベル放して。僕たち行かなくちゃ」
「放っておけばいいだろ。まだこっちが終わってないんだからな」
ニヤリと笑いながら言うアルベル。
「ダメだってば、放して!放してくれなかったら…」
「何だよ?」
「ここでイセリアルブラスト発動させるよ」
「……フン。まぁ続きは後でも出来るからな」
そう言うとフェイトを拘束していた腕を放す。
「ふぅ…じゃ、行こうか?アルベルも行くんだからな」
ベッドから立ち上がりドアの方へ近付くフェイト。途中に机の上の山積みの書類が目に入った。
(まだあんなに残ってるのか…)
そう思うと何だか先が思いやられる。
「アルベルもちゃんと自分の仕事してくれよ。まだあんなに残ってるんだから!」
ビシッ!と机の方を指差す。
「うるせえな。そんなことはどうでもいいんだよ」
「絶対僕のこと書類整理の為に連れて来たんだ…はぁ」
そんなことを言いながら歩いていたが、あと一歩でドアというところで急に腕を強く引っ張られる。
「ちょっと、アルベル!いい加減にしろよッ!!」
少し怒りながら引っ張られた方に振り向こうとした。…が、後ろから抱きつかれてしまった為に体を動かせなかった。
そして、アルベルはフェイトの耳に息がかかるくらいの距離で囁いた。
「言っただろ?一緒にいたいからと、。…愛してる、フェイト」
それだけ言うと、アルベルはフェイトから離れてドアを開けて部屋から出て行ってしまった。
一方、ドアの前で立ち尽くすフェイト。
「……///。不意打ちなんて卑怯じゃないか…」
そう言ったフェイトの顔は真っ赤だった。
そして、表情は言った言葉とは裏腹に、とても嬉しそうな笑顔だった。
-end.
後書き。
う〜ん、長い。
フェイトが漆黒の副だんちょなパロとのリクでしたが、難しかったです。
うまく表現出来てるといいんだけど…
こういうパロは初めてなんで感想すっごく欲しいです!
2004/8/11